モンブラン一周の祭典、UTMBが今年も終わりました。世界のトップランナーから市民ランナーまで、さまざまなドラマがありましたが、完走できた人とできなかった人の差はどこにあるのでしょうか。脚力や才能の違い?もちろんそれもあります。ただ、私は100マイルの完走率を分けるのは「プロジェクト管理能力」だと思っています。
100マイルはフルマラソンを2回やっても、まだ残りフル1本分以上ある距離です。標高も累積獲得も桁違い。行き当たりばったりでは到底ゴールできません。言ってしまえば、UTMBを走ることはシステム開発プロジェクトをリリースまで持っていくのと同じです。
仕様書なしではゴールできない
例えば、システム開発プロジェクトが失敗する典型例に「仕様書なしコーディング」があります。とりあえずコードを書いて、動いているように見えても、テスト工程に入るとバグだらけ。結局デバッグ地獄に陥り、リリースに至らない。
100マイルでも「なんとなく距離を積んでいるから大丈夫」という人は、このパターンに近いです。序盤は順調に走れていても、中盤から脚が攣る、補給ができない、眠気で歩けない……バグが次々に発生して応急対応に追われ、最終的に関門アウト。まさにプロジェクト炎上=DNFです。
タイム表はガントチャート
完走できるランナーはプロジェクトマネージャー的な視点を持っています。タイム表を作成し、プランAとプランBを準備。その間に収めるイメージで淡々と進めます。これはまさにプロジェクト管理のガントチャートです。進捗をモニタリングし、予定より遅れても「許容範囲か」「どこで調整するか」を冷静に判断していきます。感情ではなくシステムとして進捗を管理するのです。
リスク管理こそが完走力
100マイルでは必ず何かが起こります。胃腸トラブル、足のマメ、眠気、天候の急変……これらをどう扱うかが、完走かDNFかを分けます。
リスク管理には大きく3つの戦略があります。アルコール摂取を例に書いてみます。
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回避:リスクをゼロにする(例:完全断酒)。
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軽減:リスクを減らす(例:普段は飲むが、レース2週間前から控える)。
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受容:リスクを理解した上で受け入れる(例:前日までアルコールを飲み続ける)。
どれを選択するかは個人の自由です。ただ、リスク管理を何も考えずに惰性で毎晩ビールを飲んで「胃腸トラブルでDNFしました」では、仕様書なしでコードを書いてバグまみれになるのと同じです。もし飲み続けるのであれば「自分は受容を選んだ」と理解したうえでやることが大切です。それがプロジェクトマネジメントの基本姿勢です。
振り返りと課題設定が成長につながる
プロジェクトマネージャーが優れている人は必ず「振り返り」を行います。何が課題で、何を改善するのかを整理します。逆に課題を特定できない人は、毎回同じミスを繰り返します。課題を特定、簡単なようでできない人が結構います。
100マイルでも同じです。「暑さでやられた」「補給が合わなかった」程度の振り返りでは、次も同じ理由でDNFします。課題はもっと具体的に設定すべきです。「累積標高2500mを超えた地点で失速する」「ジェルを1時間に2本摂ると胃が持たない」など、数値や状況で分析できる人ほど強くなっていきます。
UTMBのドラマは管理力のドラマ
今年のUTMBも、体力だけでは説明できない数々のドラマがあったのではないでしょうか。途中でリタイアした人、最後に順位を一つずつ拾いながらゴールした人。表面的には走力や経験の差に見えますが、その裏には「課題設定」「リスク管理」「進捗管理」といったプロジェクト管理能力があります。
100マイルを走ることは、走力勝負というよりプロジェクトマネジメントの総合演習です。UTMBのゴールゲートをくぐったランナーたちは、優秀なプロジェクトマネージャでもあるのです。
まとめ
100マイル完走のカギは、才能や練習量に加えて「プロジェクト管理能力」です。仕様書を作り、ガントチャートを引き、リスクを定義して対策を決める。そして実行と修正を繰り返す。これはまさにシステム開発と同じです。
UTMBが終わった今だからこそ強調したいのは、100マイルのゴールは「走力」だけでなく「管理力」で決まるということです。
DNFは「プロジェクト炎上=リリース延期」、完走は「リリース完了」。
そう考えると、100マイルの世界が少しユーモラスに見えてきませんか。
難しく考える必要は無くて、ビジネスのプロジェクト管理はプロジェクトメンバーやステークホルダーとの各種調整があり困難なことも多いですが、100マイルは管理すべきは自分のみ。そういう意味では、完走するのは難しくないはずです。
