久しぶりのジュネーブで見つけた小さな幸せ:バスを待つ数時間の物語

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ジュネーブに降り立ったのは、ほんの数時間の滞在予定だった。クールマイユール行きのバスは、ジュネーブ市内からしか発着しない上に、本数も限られている。UTMBの前、ちょっとした移動のついでに、ジュネーブの街の散策が叶ったのだった。

空港に着くと、いつものようにSBB空港駅へ向かった。スイスの鉄道システムは、何度来ても洗練されていると感じる。駅に着くと、目に飛び込んできたのは、巨大なアップルの広告。

そういえば、ここ数年、この場所は常にアップルの広告が占領している印象がある。日々の流れの速さを感じると同時に、この変わらない風景が、どこか安心感を与えてくれるのも事実だ。駅の端の方にMIGROSの店舗があるのが見えた。ここはジュネーブに来るたび、つい立ち寄ってしまう場所である。

MIGRO前の、駅のプラットフォームから上がった場所では、BikeBoxAlanのバイクケースを持った一行が目に入った。その姿を見て思い出した。そういえば、自宅にも同じバイクケースがあったんだ。でも、今まで一度も使ったことがない。バイクトラベルの夢を抱いて購入したけれど、なぜかタイミングが合わずに実現していない。彼らの姿を見て、少し羨ましく感じたが、これもまたいつか叶えられるだろうという期待もあった。

切符を買い、ジュネーブ中央駅へ向かう電車に乗り込む。

スイスの電車はやはり静かで快適だ。日本のように過剰なアナウンスもなく、ただ穏やかに流れる時間が心地いい。それにしても、たった一駅移動するだけで3フラン(=約520円)かかるのは、スイスならではの高物価を実感させられる。たった1時間有効の切符にしても、流石スイスというところだろう。

ジュネーブ中央駅に到着すると、懐かしい気持ちが込み上げてきた。ここに来たのは2001年と2005年以来、今回で3度目だ。

駅前の雰囲気は少しずつ変わっているが、それでもどこか昔の記憶が残っている。駅を出て、街並みを歩いてみると、再びジュネーブの風景に溶け込んでいくような気がした。20年ぶりなのに、なぜか心が安らぐ瞬間だった。2001年にここに来た時は確かユースホステルに滞在した。2段ベッドの6人部屋くらいだった気がする。アルベールビルから来たと言っていたフランス人と会話したことを思い出した。そして一風変わった老人が同じ部屋だった。彼らは今どうしているだろうか、とふと思った。

今回、少しだけ時間があったので、久しぶりにレマン湖の噴水を見に行くことにした。この噴水を見るのは2001年以来で、実に20年以上ぶりの再会だ。巨大な水柱が勢いよく空に向かって吹き上がる光景は、変わらず圧巻だった。

まさか、人生でもう一度この噴水を目の前にする日が来るなんて、思ってもみなかった。穏やかな湖面と対照的に、噴水の迫力は記憶以上のもので、見入ってしまった。ここでしばし、時間を忘れ、ただ噴水を見つめていた。2001年の自分がここに来た時は20年後自分がどうなっているかなんて想像もできなかった。でも、再び元気にここに戻って来られたことに感謝した。

少し歩き疲れたので、ベンチに座って湖を眺めながら、ふと考えた。なぜ今、自分はここにいるのか。UTMBのため、ジュネーブからクールマイユールへ移動するという計画が、こうして偶然にも懐かしい場所との再会をもたらしてくれた。バスの本数が少ないという不便さも、こうしてみると、小さな冒険の一部だ。忙しい日常の中で、こうした「待つ時間」を楽しむことができるのも、旅の醍醐味のひとつなのかもしれない。

ジュネーブの滞在は、ほんの数時間だったけれど、懐かしい場所と再び向き合うことで、心が少し軽くなった気がした。20年ぶりに見た噴水、静かな電車の時間、そして、ふとした瞬間に感じた旅の余韻。それらが積み重なって、ジュネーブでの短い時間が、思いのほか充実したものになったのだ。

次の目的地は、UTMBの前に滞在するクールマイユール。冒険はまだ始まったばかりだが、このジュネーブで過ごした数時間は、きっとこの旅の中でも特別な一瞬として心に残るだろう。


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