UTMB2024: La Flégère (U15)からChamonix (シャモニー)まで

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最後の7km:精神的な再生と肉体的な痛みの攻防

La Flégèreを出発した瞬間、ゴールがやっと目に見える形で心の中に浮かび上がってきた。この最後の7kmは、試走した時の記憶が鮮やかに残る区間だが、今は限界を超えた体がそれを裏切るかのように重く感じられた。特に足裏や足指に鋭い痛みが走り、急勾配の下り道は一歩ごとにその負担を強いる。しかし、「あと7km」という事実が、精神的な余裕を取り戻す鍵となる。

これまでのレースで感じていた精神的な崩壊が、ここにきて少しずつ回復し始めているのが分かった。精神的な苦しさはもしかすると、気の持ちよう次第なのかもしれない。希望が心に灯ると、不思議なことにこれまでの痛みが少しずつ薄れていくような気がした。もちろん、体の痛みは依然として残っている。しかし、精神的な余裕が出てくると、痛みさえも和らぐように感じられるものだ。

下りの途中にある「Chalet de La Floria」

下りの途中で視界に入ったのは、試走時に立ち寄った「Chalet de La Floria」だ。このカフェは、標高1350mの地点にあり、シャモニーの街全体が美しく見える場所だ。2年前にここで短い休息をとったことを思い出し、その記憶が今の自分を再び前に押し進める力となっていた。足の痛みは相変わらずだったが、このカフェを目にした瞬間、シャモニーの住宅街がもう目の前に広がっていることを知り、少しだけ希望が湧いてきた。

このカフェに近づくとき、前年のUTMB女子覇者であるコートニー・ダウルウォルターらしき人が登ってくるのが見えた。疲れから来る幻覚かもしれなかったが、その光景は不思議と自分の中に再びエネルギーを与えてくれた。

応援と共に進むゴールへの道

「Chalet de La Floria」を過ぎた後、次第に住宅街が広がり始め、ゴールがいよいよ近づいていることを実感する。周囲の応援の声もどんどん大きくなり、沿道からは「Bravo!」「Allez!」と声援が飛んでくる。これまでの疲労の中で、その声がまるで全身に力を送ってくれるかのように感じられた。

ランナーたちの表情にも、安堵と喜びが混じり合ったものが浮かんでおり、すべてのランナーが共にゴールへと向かう仲間であることが感じられる。この瞬間、すべての苦しみが一瞬で和らぎ、ゴールに向かって進むことだけに集中できるようになった。

この7kmは、精神と肉体の戦いそのものだったが、すべてがこの瞬間のためにあったと思えるような集大成の区間でもあった。

住宅街を抜けて:記憶通りの最後の道のり

下りきると、シャモニーの住宅街に入る。2年前の試走時の記憶通りの景色が広がり、ここまで来たことへの達成感がじわじわと湧き上がってくる。だが、ここでも気を抜くわけにはいかない。疲労が極限に達している中、足を慎重に運ぶ必要がある。臨時で設置された歩道橋を越え、シャモニーの中心部へと向かう。川沿いの道に出ると、もうゴールまで500mだ。

ゴールへの最後の一歩:歓声に包まれて

残り500mに差し掛かると、足はもはや走ることができず、歩くように進む。体が限界を迎えていることをはっきりと感じながらも、沿道の声援に後押しされ、最後の力を振り絞る。沿道の観客の数は少なくなっているが、それでもゴール地点には多くの人々が待ち構えており、祝福の声がゴールへと導いてくれる。最後の数歩を踏みしめ、フィニッシュラインを越えた瞬間、すべてが報われたと感じた。

計画と現実のギャップを埋める:レースの教訓

UTMBを完走した今、振り返って感じたのは、計画の重要性だった。レース前に立てた計画がなければ、このゴールは決して達成できなかっただろう。だが、それ以上に重要だったのは、レース中の現状認識だ。自分の状態を常に把握し、どの地点にいるのか、どれくらいのペースで進んでいるのかを正確に見極めることが求められる。計画を立てるだけでは不十分で、現実と計画の差を常に意識しながら、その都度適切な判断を下すことが大切だと感じた。

遅くてもいい、自分の位置を把握し、今置かれた状況で何をすべきかを考える。それが、成功の鍵だ。計画表と照らし合わせて、時にはペースを上げる必要があるかもしれないし、逆にペースを落として体力を温存することが重要な瞬間もある。何も考えずに気ままに走るだけでは、失敗するリスクが高くなる。どのランナーも完璧ではない。その中で、計画と現実の差異を正確に把握し、それに基づいて冷静に判断することが、UTMBを始めとした100マイルのトレイルランレースを完走するための最も重要な教訓だと改めて感じた。

UTMBは、走力だけでなく、計画と適応力が問われるレースだ。走るのが遅くても良い。ゴールにたどり着くためには、体力だけでなく、戦略と冷静さが必要だということを、このレースで改めて実感した。


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