トレイルランナーにとって、富士山はその壮大な標高や厳しい地形から理想的なトレーニング場所として知られています。しかし、実際に私は2023年に5回、2024年に1回訪れてみて、富士山がトレランの練習に適しているかどうかを評価する機会がありました。今回は、その経験から富士山でのトレラン練習の良し悪しについて考察します。
富士山でのトレーニングが減った理由
2023年には5回も富士山に通ったものの、2024年は1回しか行っていません。その理由は主に以下の点にあります。
1. 距離と時間
まず、私の住んでいる場所から富士山までの距離が問題です。片道2.5時間かかるため、1日練習に行くだけで往復5時間も電車での移動に時間を取られてしまいます。この移動時間が徐々に負担となり、練習頻度が減少する一因となりました。
2. コストの増加
さらに、2024年から富士山の登山には2000円の入山料が課金されるようになりました。これも、頻繁に通うには少しコストがかかりすぎると感じた点です。コスト面での負担もあり、より近場での練習を選ぶことが多くなりました。
3. ハイカーの多さと混雑
5合目から上は多くのハイカーが登山を楽しんでおり、特にシーズン中は混雑が激しくなります。トレイルランニングをしていると、他の登山者とのすれ違いやペースの調整が必要になるため、スムーズに練習ができないことがあります。トレイルランナーとしては、もう少し静かな環境でトレーニングをしたいという思いが強くなりました。
4. 勾配と下りの路面
富士山の勾配は非常に急で、UTMBなどの長距離レースに向けたトレーニングにはやや過酷すぎると感じます。UTMBのコースは比較的緩やかな勾配のため、富士山の急な登りは、正直なところレースに直結しない部分が多いです。また、富士山の下りは砂地であるため、UTMBのような固い路面とは性質が異なり、練習効果が薄くなります。
5. 天候の不安定さ
富士山は標高が高く、天候が非常に不安定です。天候が崩れると急激に気温が下がり、風も強くなります。時には雷雨もあります。そのため、予定していた練習が中断されることも多く、富士山でのトレラン練習には不確実な要素が多いと言えます。
6. トレイルヘッドまでの距離と交通
富士山のトレイルヘッド、特に吉田口までのアクセスも容易ではありません。公共交通機関を利用する場合、富士山駅から吉田口(中の茶屋)まではロードを数キロ走る必要があります。また、富士山駅から東京方面への電車の本数が少なく、帰りの便に制約があるため、時間を上手く調整しないといけません。これもトレーニングのスケジュールを立てる上で不便な点です。
UTMBには富士山練習は必須ではない
富士山でのトレーニング頻度が減少しても、私自身は問題なくUTMBを完走できました。この経験から、富士山でのトレーニングが必ずしもUTMB完走のために不可欠ではないと感じました。特に、UTMBは標高の割に緩やかなコースが多いため、富士山の急勾配を頻繁に練習する必要性は薄いと言えるでしょう。
もちろん、富士山でのトレーニングが全く無意味というわけではありません。例えば、平均3000メートル以上の標高で行われるアメリカの「ハードロック」などのレースでは、富士山のような高地でのトレーニングが非常に有効だと思われます。富士山の高い標高での走りを経験することは、酸素が薄い環境での耐久力を鍛える上で役立ちます。
練習場所としての富士山の位置づけ
総じて、UTMBレベルのレースに挑戦するのであれば、富士山でのトレーニングは必須ではありません。1回くらい富士山に行って、高地での走りを試してみるのは良い経験になりますが、他にも優れたトレーニング場所は多く存在します。例えば、標高は低いものの、UTMBに近い勾配を持つ山々や、下りがより固い路面のトレイルなどが理想的です。
富士山はトレイルランナーにとって特別な場所であり、時折訪れてその雄大な景色の中で走ること自体が貴重な体験です。しかし、UTMBのようなレースに向けたトレーニングとしては、距離や時間、そしてコストを考慮すると、他の場所を優先する選択肢も十分にあります。
結論:富士山は必須ではないが、時には良い
富士山は確かにトレイルランナーにとって魅力的な練習場所ですが、UTMBレベルのレースに向けては必須ではありません。距離や勾配、路面の違いなどを考慮すると、他の場所でも同様の、あるいはより効率的なトレーニングが可能です。ただし、3000メートル以上のレースや、高地トレーニングが必要な場合には、富士山は非常に有効な場所となります。